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硝子の羽根の欠片

なのはに最近熱を入れている二次創作SSサイト。
オタクとか百合とかに興味がない方は見ない方が吉。
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先月の某イベントに出した作品。
これはフェイトさん視点で、すげえネガティブに考え込むフェイトさんに萌えるための話……だったはず。
作品提出後からイベント終了間際まで、これの続編というか対比になるなのはさん視点のも書きました。それはそのうち掲載…かな?





 思わず反応して、体がびくっと震えた。
 けれど私の胸の中にいる彼女は、そんなこと気づいていないかのように、私の胸に顔を埋めている。
(そりゃ、まぁ寝ているからそうだろうけど……)
 無防備な寝顔、預けられた体、胸にかかる吐息……
(生殺しって、こういうのを言うんだっけ)
 はぁ、と腕の中の彼女とは大きく異なる類の息を吐き出した。
 彼女の息が胸にかかる度に、鼓動が大きく鳴り響くのを、自分で感じていた。


 どのような流れでそうなったのか、は覚えていない。
 けれど彼女が酷く疲れた表情をしていたのはよく覚えている。すぐに脳裏に浮かべられるくらい。
 その理由は、なかなか満足な休息すら取ることのできない多忙さからきているのかもしれないし、何かストレスでも溜めているのかもしれない。最近よくため息をついているのを知っていたから。
 だから『疲れてる? それとも何かあった?』と聞いたのだ。
 彼女は一瞬目を丸くした後破顔して、『なんでもないよ、大丈夫』と言ったんだ。
 それからいつものように、二人の部屋で持ち帰り仕事をそれぞれに片付けて、後はお風呂に入って寝ようかという時間になった。
 先にお風呂に入ってと声をかけるため、彼女を振り返った時、彼女の目から涙が零れていた。
 名前を呼んでも、彼女は泣いていることに気づいていないようだったから、その頬を伝う涙を手で拭ってあげた。そうしたら、彼女も自分が泣いていることに気づいたみたいだった。
 それから彼女を抱き寄せて、その長い髪を梳くように撫でていたら、彼女はぽろぽろと涙を零し、そしてやがては眠ってしまった。
 眠ってしまった彼女が起きないように、そっと抱え上げ、ベッドへと下ろした。
 抱き寄せた時に彼女はしっかりと抱きついてきていたから、彼女だけ寝かせることはできなかった。
 自分もベッドにあがり、座って彼女が寝やすいようにその体勢を整えてあげる。
 深く寝入っているらしい彼女は、それでも起きることはなく、ほっと息をついた。



 それからずっと、彼女の髪を梳くように撫でながら、飽きることなく寝顔を見てた。
 どうして疲れた顔をしていたのか、どうして涙が零れてきたのか、その理由はわからない。
 話してくれるなら聞きたいと思うけれど、聞きだそうとも思わない。
 聞きだそうとすれば、きっと話してくれるだろうと思う。けれどそれは、負担になるんじゃないだろうか。
 知りたくないわけはないけれど、こうやって彼女が素直に泣けるようにしてあげられただけで、かなり満足だから。
 ……ただこの、彼女の寝息が感じられて必要以上にドキドキしてしまうのは、さすがにいつもだと困るけど。

 ずっと寝顔を見ているから生殺しだとか思ってしまうのかもしれない。
 そっと彼女が腰に回してきている腕を外し、私はベッドから降りた。
 着替えてお風呂に入って、彼女も着替えさせないと制服が皺になってしまうし。
 持ち帰り仕事は終わっているから、明日の朝食の支度でもしておこうか。泣き疲れて眠ってしまった彼女だから、起きた時にはきっとお腹を空かせているだろう。
 そうと決まればまずは……

「フェイト……ちゃん……」
 なのはの声に、私はすぐ後ろを、なのはを振り返る。
 なのはは涙をまた流して、私の方へと手を伸ばす。
「なのはっ」
 伸ばされた手をつかみ、なのはの体を抱きしめる。
 抱きしめたその時、なのはの体が震えていることに気づいた。
「どこにも……いかないで……」
 私がつかんだ手は、私の手を握りかえし、そうでない手は私の背中に回される。
 なのはの怯えように、私は胸を鋭く刺されたような痛みを感じた。
 なのはの耳に口を近づけて、そっと囁く。
「私は……なのはのそばにいるから。……ずっと、離れないから」
 まるでその囁きが合図であったかのように、なのはの震えが落ち着いた気がした。

 またなのはの頭を撫でて、そっと抱きしめていた。
「……フェイトちゃんはね……暖かいの」
「なのは……?」
 不意に口を開いたなのはの言葉は、私にはどんな意味を持つのかわからなかった。
「ずっと……ずっとここにいたいって……、フェイトちゃんの腕の中にいたいって……思うの」
 顔を私の胸に埋めたまま呟く彼女の、声と共に吐かれる息がくすぐったい。
 けれど今の吐息は、胸を高鳴らせる効果はない。
「……そっか、なら、ずっといてくれればいいよ」
「うん……、私はフェイトちゃんのぬくもりと、優しく撫でてくれる手が好きなんだ……」
 とろんと、眠りに落ちる直前のようなまどろみの声で、なのはは言葉をつむぐ。
 そんななのはに愛しさを感じながら、私はただ微笑みながらなのはがまた眠ってしまうまで撫で続けた。


 すやすやと自分の胸で眠り続けるなのはを、私はどんな顔をして見下ろしているんだろう。
 またも胸にかかる吐息は、私の心を熱くするけれど、心を突き刺す痛みもやはりある。

 私は、なのはの横にいて、いいんだろうか?

 どこまでも明るく誰にも好かれる、私を日の当たる世界へと引き上げた力の持ち主。
 対する私は、底の見えない暗い世界へと落ちているはずの者。
 私は時折、言いようのない罪深さのようなものを、感じるのだ。
 ここにいてはいけないのではないか、彼女に笑顔を向けられるに値する存在なのか。
 普通の、人間じゃないくせに。

 そっとなのはの髪を指先で梳く。
 茶色の綺麗な髪が、私の指の合間をすり抜けて零れていく。
 目を閉じなくても、私をまっすぐ見つめる青い瞳を思い出せる。
 彼女のピンクの魔力光と、それをまとって空を駆け抜ける彼女の姿も。

 どうしてだろう、こんなに好きなのに。
 こんなに愛しているのに、許されないことなんだろう、この想いは。
 もしかしたら、彼女はそうは思わないかもしれない。私の考えを一蹴するのかもしれない。
 けれどいつだって、私にはこの世界が眩しすぎるのだ。
 彼女が見せてくれる景色は、いつだって優しくて暖かくて、そして私には眩しすぎる。
 彼女がどんどん高い空へと飛んでいくのに、私はそのずっと後ろを遅れていくしかできない。
 追いかけていられる今はいいけれど、いつ力尽きて逆さまに落下していくともしれない。
 その時彼女は、落下した私に気づかないかもしれない。そのまま更に高いところへと行ってしまうんじゃないだろうか。
 落下していく私に気づいたとして、彼女はそんな私をどう思うのだろうか。

 ずっと離れないと囁いた先から、私はそんなことを考える。
 私に抱きついているなのはの温もりも、背中に回された腕も、愛しくてずっと感じていたいと思うのに、温もりも腕もない未来を、想像してしまう。
 きっとそんな未来でも、彼女が空を飛ぶ力はなくならないだろう。
 だから私は、今この一時の彼女が安らげる場となれるだけでいい。
 けれどそう思う時、決まってこの胸に痛みが走る。
 ずっと一緒にいたいと願う時に走る痛みと、同じ痛み。
 一緒に居続けると願うことと、一時だけでいいと思うこと、どちらであっても走る胸の痛み。
 そしてなのはの息がかかって、胸は熱くもなる。

「なんだ……」
 結局どちらにせよ、全てはなのはなんだ。
 私にはなのはが全てで、なのはのことだからこの胸は熱くも痛くもなる。
 それはきっと、友達になったあの時からずっと。なのはにこの感情を抱いた時から。


 まだ抱きしめる手の力を緩めていないなのはを、もう自分から引き離す気はなくなっていた。
 制服が皺になってしまうのは……しょうがないと割り切ろう。
 明日はいつもより早めに起きて、朝食の用意をしてあげよう。
 こんな淀んだ考えなんて、気づかれないように。なのはの笑顔を少しでも多く見られるよう。
 いつか私の空を飛ぶ力がなくなるその時まで、私がなのはにしてあげられることを。
 きっとなのはは、私がいなくても高く飛んでいけるから。
 私が落ちて潰れてしまうまで、決して気づかれないように。
 なのはに私が抱いている気持ちも、気づかれないように。
 私がいない彼女の未来も、きっと輝くだろうから。彼女の未来に陰が一つでも差さないように。
 そんな想いを気づかれないように、私は震える指先で、なのはの髪をまた梳いた。


END
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Comments:

どうも(^^)/
前に拍手でコメントしましたcha-mです。
やっぱりここのssは最高です!もう最高としか言えません!!
『キミがボクの心を支配する』読んでいたら,涙がポロリと。。。(マヂですよ
もうメッチャ感動しました〜(PД`q)
ネガティブなフェイトさん大好きッ!!というか私フェイト至上主義です!(何
なのはさん視点楽しみにしてます。
ではまた来ますね。頑張って下さい!
comment by: cha-m | 2007/09/02 1:07 AM
どうも、新作もお読みいただきありがとうございます。
そしてベタ褒めいただき感謝感謝です。
フェイトさんがネガティブ過ぎないかなー、と思いもしましたが、そのように言っていただけて嬉しいです。
なのはさん視点は…遅くても今週末には掲載します。今暫くお待ちください。
それではコメントありがとうございました。
comment by: 維 | 2007/09/02 7:47 PM

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