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硝子の羽根の欠片

なのはに最近熱を入れている二次創作SSサイト。
オタクとか百合とかに興味がない方は見ない方が吉。
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以前書いた「entwine」というなのフェイSSがありまして。
テーマが、「隊長不良」というなのフェイなのですけれども、当時フェイトさん視点のも読んでみたいというありがたいお言葉を頂戴したのです。


かなりお待たせいたしましたが、それのフェイトさん視点がようやく出来上がりましたので掲載です。
もちろん視点が変わっただけなので、「なのは×フェイト」のカプは同じですよー。
entwine同様、テーマがテーマなので、公式とキャラが変わってる部分があります。
公式とキャラが変わってるのは嫌だという方はご覧になられないよう。
ちゃんと注意したんだからねっ!!

entwineが前提にあるので、entwineを読んでからの方が話がわかるかもしれません。
あ、前以上にエロくないですよ。





 隊舎の影で吸うタバコはいつも美味しくなかった。

 いつからタバコなんてものを吸うようになったのか、きっかけは思い出せない。
 ただ、思い出せないのだから大したことではなかったんだと思う。
 だからといって止めるつもりも特にはない。
 これは始めたときのような、それこそとるに足らない止めるためのきっかけがないだけなのだろうと思う。

 だからそう、私がこうして無闇に人目につかないように隊舎の影で、慣れた調子でタバコを吸っていることに意味なんかないのだ。


 こうしてぼうっと、人通り少ない隊舎の端っこに突っ立って、隠し持ってるタバコとライター、ポケット灰皿だけ用意して吸っている様子は客観的に見れば、きっと滑稽なことだろう。
 少なくとも最前線での戦闘に赴く執務官ともあろう者が、規律規範を率先して遵守する職種のはずの人間が、タバコなんてね……。
 ミッドチルダでの喫煙可能年齢は当然達している。法律的には問題はない。
 ただ、管理局において戦闘局員は喫煙は避けるべきものであると言われてきている。これは訓練校でも何度も言われることだ。もしかしたら入局後のなにかの研修でも言われているかもしれない。
 理由はもちろん健康を害する影響が大きいから。呼吸器系の器官が劣るのは、戦闘職種としては致命傷と言える。
 もちろん全員が全員喫煙していないわけではなく、かつては前線に出て戦っていたものの昇進などにより後方指揮に業務が変わっていった人などは喫煙していることが多い。
 だが現役で前線に赴き戦う戦闘職種において、喫煙をする者は事実いない。
 なによりもその行為こそが、自分の寿命を二つの意味で縮めると知っているから。喫煙による直接的な健康被害と、喫煙による身体能力の衰えが誘発する戦場での敗北とで。

 もしかしたら私は、それらを望んでいるのかもしれない。





 今日も補佐官の隙をみて吸うタバコ。
 緩く燻る煙を持てあましながら、立ち上りかき消えるそれのように自分の気配を希薄にする。

 その静かで停滞した空気を破った無粋な乱入者は、私の背後にある隊舎内に現れた。


 人通り少ない隊舎の端っこ。私がいるのは屋外だけれど、隊舎内でも人通りの少なさは結局変わらない。
 そんなところに話し声と共に移動してくる誰か。

 安寧を打ち破られたような不快感を覚えつつも、見つかるわけにもいかないと柱の影に隠れる。
 中からは、そうそう気づくことはないだろう。
 しかしそこまで気にする必要は、もしかしたらなかったかもしれない。
 乱入者は、他のことに気を取られていたのだから。


「そのっ、……ずっとあなたのことを見ていました」

 ありきたりといえばありきたりな、告白を始めるための切り替えのフレーズ。
 人がこんな台詞を言う機会はそうそうないものだろうとは思うけれど、私も何度かこうやって告白を切り出されたことがあった。

 つまり、わざわざ人気のないこの場所にやってきた理由は告白のためだということが、この一言だけで私に知れたわけで。
 厄介な場面に、計らずとも居合わせることとなってしまった今日の不運にため息と煙を吐き出す。

「あなたの仕事に対する真摯な姿勢や、教え子たちに対する人懐っこい様子を見ていて、いつの間にか好きになっていました」

 あるキーワードに、心がささくれ立つのがわかる。
 気づかれないように身を柱に押しつけるようにしながらも、会話しているおそらくは二人の人となりを窺い知るべくそちらを見る。
 見覚えのある栗色のサイドポニーの後ろ姿だけで、色んな事がどうでもよくなってしまった。

「高町教導官、あなたのことが好きです。もしよろしければ、俺と付き合っていただけませんか?」

 告白の締めの言葉に出てきた名前に、奥歯を噛みしめる。
 不快な音が頭蓋の中で響くが、歯にかけた力を緩めることは出来なかった。

「お気持ちはありがとうございます。けれどごめんなさい、私は貴方とお付き合いできません」
「どうしてか、お教えいただけますか?」

 さほど迷うことなく出てきたお断りの言葉。
 真摯さを装いながらすがるような問いかけ。
 それらの言葉の一つ一つが発されることが、私の心に爪を立てる。

「好きな人が……いるんです。もしどなたかとお付き合いするなら、その人じゃないとわたしが嫌なんです」





 そして二人がその場を離れるまで、私はずっと立ち尽くしていた。
 私は放心状態だったようで、手に持ったままだったタバコの火が指先まで迫った熱さに意識を取り戻した。
 ほとんどが燃えかすとなったタバコは灰皿に捨て、新しい一本を取りだして火をつける。

 くすぶる煙が目の前をちらつく。
 肺に流れ込む毒は、確実に私の心を奥から侵していく。

 偶然でもこうして”居合わせてしまった”経験はなかったけれど、彼女が多くの求愛を向けられてきていることは知っていた。
 彼女は困ったような表情で濁していたけれどソレと推察できる程度には話していたし、職場内での噂でも耐えたことがなかったのだ。居合わせたとはいえ、知っていることを再認識するくらいの重みしかなかった。


 ただ内心で驚いているのは。
 もしかしてなのはは、私と付き合いたいという気持ちがあるんだろうか、という疑問の気づき。

 そんなことを考えたことがなかったという事実に二度驚く。

 なのはが私のことを好きなのは知っている。
 だって、なのはにとっての私は特別だから。特別に、してしまったから、彼女は私を拒絶できない。
 他なんて選択を、代替さえも認められない頑なな彼女だから、尚更。

 それは出会った当初のあの頃から始まる、君の真実。

 だから先の言葉が断り文句だけでないのならば、その相手は私なのだろう。


 けれど、君は私に付き合うことを望まない。求める言葉を投げない。
 明瞭な関係性の変更を、私たちは得ようとしない。

 私の理由は簡単だ、どうなると知れない自分に君を巻き込めない。
 それは職務内容のこともそうだし、タバコを吸い続けていることも些細だがそうだ。いい加減に、理由らしい理由なく害にしかならないことを繰り返している。
 多くの人を救い、助け、導き、愛す、星の煌めきにも例えられている君を巻き込むだなんていう、君以外の人に築き上げられた重い責任を、私は負えない。美辞麗句を並べ立てられ称えられている君を、下らないとさえ思うのだ。
 なにより君は、私のためになんでもしてしまうだろうから。そんな君こそが本当の君だと知ってしまっているのだから。

 君に言いたくても言えない理由があるのならば、推測はつく。
 言えないんだ、怖くて。
 万が一の拒絶の可能性が恐ろしくて、現状維持なら私が君を戯れのようでも求めているからそれで満足する。



 いつまでもこんな関係を、続けていられるはずもないだろうに。
 それでも私たちはこの関係を続けようとしている。

 やがて訪れるだろうこの関係が終わるとき。なのははどうするのだろうか? 私はどうするのだろうか?
 歪みながらも確かに存在する私たちの他の人とは異なる関係は、全てなかったことになるのだろうか。


 恋人でも婚約者でもない私たちなら、それは至極当然の結果なのに。

 ただそれだけのことなのに、どうしてか胸がざわついて。タバコを吸っていたら落ち着くはずのそれが、逆に激しくなるばかりで。



 私はスターズ分隊長の執務室を尋ねようとしていた。
 彼女を強引に抱くために。
 きっと彼女は嫌がる素振りをするのだろう。勤務時間内の職場なのだから。


 ねぇ、嫌なら本気で拒絶すればいいんだ。
 なのはが本気になったら、私を退けることだって出来るでしょう?
 君が拒絶しないなら、私はどこまでも増長していくばかりだよ。

 拒絶しないのなら……君の上辺だけの言葉を全てはね除け、どこまでも君をいただくよ。



 そして私は、歪な気持ちを抱いて君の部屋のドアをくぐる。


END
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