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硝子の羽根の欠片

なのはに最近熱を入れている二次創作SSサイト。
オタクとか百合とかに興味がない方は見ない方が吉。
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タイトルから『もしかして……』と思われた方も、もしかしたらいらっしゃったかもしれません。

過去にボクが書いたなのはSS、それもフェイト視点となのは視点の2種あるなのフェイSSがありまして。
キミがボクの心を支配する」と「キミがボクの心を乱す」、これが対の作品となっております。
当初3部作として考えていたにもかかわらず、先の2作で止まっていたこのシリーズの続編、完結編にあたる3作目を今回は掲載です。
この作品単独でも読めると思いますが、先2作を読んでいただいてからの方がより楽しんでいただけるかと思います。

これがリリマジで某人に予告してた作品だよ! 長く待たせてしまいすみません……


先日掲載した「隊長不良」にいただいた(ありがたい)拍手コメは後日返信させていただきます。
しょぼくれていたところをひかわさんにフォローしていただいて、嬉しいやら気恥ずかしいやら情けないやらですが……。やっぱりありがたいの一言に尽きます。


それでは先2作の続編、続きからどうぞ。










「なのはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



























 喉の奥が痛みに裂けたり、声帯を震わせすぎて引き攣れたりしたって構わない。

 君を、目の前で失くすなんて……そんなことは考えられない。





 落下していく君の姿は、白いバリアジャケットが風に揺れている様が、まるで花びらのようだった。

 届け、届け、届け、届け、届け、届け、
 もっと、もっと、もっと、もっともっと、もっともっと、もっともっと、もっともっともっと、もっともっともっと、もっともっともっと!!!!

 空を浮かび、思う通りに飛ぶための魔力を全て、下降へ費やせ。
 顔を、首を、手を、バリアジャケットを、引き裂こうといわんばかりの抵抗をこの体だけで貫け。
 手をまっすぐ力の限りに伸ばして、指先が、手首が、腕が、関節から外れたって構わない。
 筋肉の筋の一本一本が悲鳴を上げて裂けようと、この広がった距離を詰める犠牲ならいくらでも捧げるから。


 どれくらいの魔力を、どんな術式で、いくつ使えばいい?

 今まで学んできた知識を、身につけてきた技術を、経験してきた全部を、未来の前借り込みで使い切れ。


 腕を失ったっていいんだ。
 声を失ったっていいんだ。
 指を失ったっていいんだ。
 肩を失ったっていいんだ。
 顔を失ったっていいんだ。
 全ての魔力を失ったっていいんだ。
 この命を失ったっていいんだ。



「なのはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 ただ落ちるばかりの君の、なまえをよんだ。


 今まで与えられてきた幸せを、過ごしてきた時間を、分け合ってきた優しさを、過去の返済含めて力に変えろ。



 まっすぐに伸ばした指先が、君のバリアジャケットの端に触れた。



 君の服を、手を、腕を、体をつかむのは一瞬。

 かろうじて近づけたそのタイミングを失わないように、肩の激痛を無視して君の服をつかみ、強く引き寄せて君の体を抱きしめた。


 落下していた君。
 落下していた君に追いつこうと、落下より速度をもった下降をしていた私。
 急にこの勢いを止めることはできなくて、私は君を胸の中へと抱え込む。

 このままでは、行き着く先は地面。二人して打ち付けられたっておかしくない。
 それは嫌で、君が傷つくことだけは避けたくて、浮遊魔法を発動させながら君をかばえるように君と上下を入れ替わろうとする。

 君は私の動きを止めるかのように私の背中に手をまわし、顔を近づけてきた。



 君と、唇が触れあった。



 その行為の意味を真っ白になった頭が考えるより先に。


「ごめんね」


 君の唇がその形をとり、声がかろうじて私の鼓膜に届く。

 君は私から身を離し、私の腕からすり抜けた。
 そして、再び君は落下する。


 再び目に入る、花びらのような君。
 目を閉じて落ちるがまま。身動き一つとる素振りもなく、ただ体を宙へと遊ばせていた。

 気づいてしまった。
 あぁ、なんていうことなんだろう。
 さっきも今も、君は落ちようとするばかりで、浮かび上がろうとする気持ちなんかかけらもなくって。
 バリアジャケットこそ着たままだけれど、レイジングハートを起動したり、浮遊魔法や飛行魔法を発動させようともしない。



 落ちていくのは、君が望んだことだったんだね。



 ねぇ。
 私の手を振り払うから、謝ったの?
 私の助けを拒絶するから、謝ったの?
 ねぇ。


 どうして、キスしたの?


 わからないよ、なのは。
 君がなにを考えているのか。
 君がどうしてこんな行動をとったのか。
 私がなにをしたのか。
 私がなにをしたいのか。


 けれど。
 にじみ出る涙が、私の行動を決める。


 かろうじてぼやけていない視界の中にあるたったひとつのものめがけて、私は再び加速する。



 さっきよりも地面への距離は短く、けれど私となのはの距離も短い。
 間に合うかどうかを危ぶんでいられる隙は一瞬だってない。

 より早く落下しろ。
 より多く魔法を使って。
 より長く手を伸ばせ。

 より確かに君をつかめ。

 そして、より強く君を抱きしめる。


 どうにかつかまえられたなのはを、もうすり抜けられないよう抱え込む。
 それがなのはにとって望まぬ拘束だっていい。

「ふぇ、フェイトちゃん!?」

 まさか、また追いかけてくるとは、つかまるとは思っていなかったんだろう。
 すぐ耳元で、戸惑う声が聞こえる。

 いけない、地面はもっと近いんだ。もう目の前。
 なのはの戸惑いに答えるより先に、上下を入れ替わる。今度こそ。

「どうして、キスしたの? どうして、謝ったの?」

 なのはからの言葉より先に、私は聞きたかったことを聞いた。
 なのはの息をのむ音がやけに鼓膜の奥に響く。



「フェイトちゃんを、愛しているからだよ」



 今度こそなのはは私の背中に手を回して、強くしがみついてくる。
 なのはの鼓動と温もりを確かに感じて、胸が熱くなる。

「ならどうか、謝らないで」
「え?」


「私もなのはを愛しているから」



 バルディッシュ、お願い。

 バルディッシュの助けを借りて、私はなのはと一緒に浮かび上がる。
 急降下からの勢いを全身で受け止めながら、無理矢理上昇していく。
 かろうじて地面との衝突は回避したけれど、衝突を回避しただけで無事とは言い難い。
 真逆の力を正面からぶつけ合い、体や臓器に相応の負荷が一瞬でかかる。
 バルディッシュにもかなり助けてもらっても、魔法行使による疲労はすべて私が負わなければならない。


 急場をしのぎ、なのはを抱えたまま荒い呼吸を繰り返す。
 どれだけ呼吸が苦しくても、浮かんでいることが苦しくても、もはや着陸する体力も魔力もなくて、姿勢を整えて地上よりほんのわずか上を浮かび続ける。
 ただなのはを抱きしめる手だけ、絶対に緩めないと思いながら。



「ごめん…、なのは。衝撃、……全然っ……殺せなかった」
 絶え絶えの息のまま、なのはに謝る。
 なのはは首を左右に振って、肩にその頭をのせてくる。

「わたしこそ、……ごめんなさい。わたしがあんなことしなかったら、フェイトちゃんがこんな目に遭うことなんてなかったのに」
 なのはの体が少しだけ震えている。
「いいんだよ……、なのはが……無事なら……」
 なのはが謝ることはない。
 なのはが自ら落ちていくことを望んで落ちていったなら。
 私はなのはを助けることを望んで追いかけていったんだから。
 そのための痛みも苦しみも全部、私が望んだことの一部でしかないんだから。

「でも……」
「なのはが、無事で……よかった」
 もう、なのはの言葉を聞く余裕なんてなかった。
 ただただ、しんどさの中でその安堵だけで胸がいっぱいになる。
 いっぱいになった気持ちに涙があふれて、目の前が全部ぼやけてしまう。
「ごめんね、フェイトちゃん。……ありがとう」
 なのはの声がして、すぐ頬に触れる柔らかい感触。
 さっきのものに近いそれを泣きながら受け止める私は、さぞかし情けない姿だろう。
「本当はね、怖かったの。フェイトちゃんが、いつかわたしのそばからいなくなってしまいそうで」
 泣きやめなくて、涙は止まらなくて、ただつぶやくなのはの言葉を嗚咽を堪えて聞いているしかできない。
「フェイトちゃんがいなくなっちゃう前に、わたしがいなくなればいいって、そう落ちてる途中で思ったの」
 言いたい言葉があるはずなのに、喉は声を出せなくて。
 安堵でしめられた心は言葉を生み出せない。
「でも、追いかけてきてくれて、嬉しかった。……本当にごめんなさい」
 声はいつまでも出てくれそうにないから、首を左右に振る。
 謝らなくていいって、そういう風にしか伝えられないことがもどかしい。



 抱きついたままのなのはに、背中を優しく撫でられて、呼吸が少しずつ整っていく。
 涙も少し前にひいて、気まずそうにしているなのはもちゃんと見える。

「もうごめんはなしだよ、なのは」
「ごめ……」
 最初の二文字で、なにを言おうとしたのかすぐわかって真っ直ぐなのはを見る。
 私の視線の意味がわかって、なのはは自分が言おうとした言葉に気づいたんだろう。慌てて口を閉じた。
 目を細めて俯き言葉を探せないでいるなのはの姿に、そっと背中を押される。

「本当は私が謝らなきゃいけないんだ。なのはをそんな気持ちにさせちゃったんだから」
「ちがっ」
 遮ろうとするなのはの声をそのままに、私は言葉を続けることで黙らせる。
 反射的にあげられた顔と目が推測の答えを持っている気がして、先に言い切ってしまう。
「なのはは、気づいてたんだね? 私が、自分は今の環境にふさわしくないんじゃないかって思っていたこと……」
 なのははきつく口を閉じて顔を俯かせる。その仕草だけで肯定されていた。
 やはり……、という気持ちになる。

「その通りだよ。私は、いつだってどこかひどく罪深いことをしているという気がしてしょうがない」
 なのはは、私の言葉を聞いて俯いたまま必死に首を左右に振る。
 聞きたくないという意思表示なのかもしれない。
 けれど気づかれていたのならば、黙っているわけにもいかないと思った。
「こうして生き続けていること、優しくて愛してくれる家族を持っていること、信頼してくれて頼れる上司や同僚・部下がいること、健やかに成長していってくれる子供たちがいることが、あまりにも分不相応じゃないかって」
 私の背中に回されたままだったなのはの手が、バリアジャケットを強く握りしめる。
 俯き身を固くして、けれど宙に浮かんだままのこの状態では、両手で耳をふさぐことが出来ないんだね。
「なにより、なのはの傍にいられること、その笑顔を向けてもらえることに値する存在じゃないはずだって……」
「嫌っ!!」

 大きく明瞭な拒絶の意志を持って、はき出された声。
 目尻に涙をためて、なのはが私を見上げた。
「わたしは嫌だよ、フェイトちゃん。わたしは、フェイトちゃんじゃなきゃ嫌だ。傍にいるのも、笑うのも、空を飛ぶのも、堕ちてゆくのも、一緒に生きていくのも、フェイトちゃんが相手じゃなきゃ嫌だよ!」
 背中に回された手が、あからさますぎるほどに震えている。
「人の価値とか、そんなこと知らない。相応しいとか相応しくないとかどうでもいい。わたしはフェイトちゃんを、フェイトちゃんだけを選んだし、フェイトちゃんだけを愛してるの!」
「ごめん……」
 思いの限りに叫ぶなのはを、きつく、きつく抱きしめる。
「謝らないで、謝るくらいならそばにいて……。お願いだから、一緒にいさせてよぉ……」
 私の肩に額を押しつけ、嗚咽を隠さずただ滂沱する涙を降りおろしていた。
「違うよ。なのはの気持ちを知らなくて、知らないでないがしろにしていて、ごめん……」
 感情のまま叫んでついには泣き出してしまったなのはは、すっかり息が上がっている。
 感情が高ぶって冷静さを失ってしまったなのはに、出来る限り優しい声で問いかける。
「なのは……、私ね、それでもずっと願ってきたことがあるんだ。相応しくないなんて否定しながら、それでも……」
 肩で大きく呼吸をするなのは。
 返事を待たずに、私はその耳に囁きかける。
 私が今までずっと、自分が罪深いと思ってきた一番の理由を。



「誰よりもなのはに一番近いところで、ずっと一緒に生きていたいって……」



 その声がなのはに届いたことは、見開かれた目でわかった。
 目を見開いて涙で頬を濡らしきったまま、私を見上げたなのはは、そのまま唇を重ねてきた。

 二度目のキスは、柔らかくて冷たくて、けれどひどく穏やかで暖かな気持ちになれた。


「一生、離さないから……。最後の瞬間まで、ずっとなのはの傍にいなきゃいけないんだからね」


 なのははまだ涙色濃い目と頬のまま今まで見たことのない綺麗な微笑みを浮かべる。
 その顔を見た瞬間、抱えてきたあらゆるしこりのようなものが霧散するのを感じた。

 生き続けていてはいけないんじゃないのか。
 優しくて愛してくれる家族とではなく、一人孤独でいなければいけないんじゃないのか。
 信頼してくれて頼れる上司や同僚・部下はおらず、ただ卑下され裏切られていなければいけないんじゃないのか。
 健やかに成長していってくれる子供たちはおらず、誰の力にもなれないんじゃないのか。
 愛する人の傍にいてはいけないんじゃないのか。

 そんな思いは、全部君が打ち消してくれた。


「うん」



 そっか、いていいんだね。
 私は、なのはの傍に。……いても、いいんだね。

 もうこんなことで君を泣かさないから。
 ずっと一緒にいるから。ずっと愛していくから。ずっと君を離さないから。



 どうか、最後の瞬間を迎えるその時にも、繋ぐこの手は離れることがありませんように。

END
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