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硝子の羽根の欠片

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私は弓凛が好きですが、ねえさん大好きな桜も好きです。
凛が大好きなセイバーも好きです。





 離れて……離されて……
 どうしてでしょうね、今でも、たまに夢に見ることがあるんです。
 あなたが私のそばで笑いかけてくれた頃を。


 高校に進学して、弓道部に入って。
 それまでと何ら変わらない、淡々と過ぎていく日々。
 普通の学校生活で、なぜかあなたは私に声をかけてくれますね。
 それは廊下ですれ違う時の挨拶だったり。
 私が教材を運ぶ時の手伝いだったり。
 美綴先輩と仲がいいから、弓道場でよく二人でお茶をされたり。

 ねぇ、遠坂先輩。
 遠坂先輩って、私たちの学年でもよく噂になっているの、知っていますか?
 綺麗で、同性の目から見てもかっこよくて、勉強も、運動もよくできて。
 ミス・パーフェクト、なんてあだ名までこっそりつけられてて。
 そのあだ名、うちの生徒なら、誰にでも通じるんですよ?
 誰にでも優しくて、先生方も遠坂先輩には一目置いているし。

 どうして、私に声をかけてくれるんですか?
 兄さんが遠坂先輩と知り合いだからって言っても、兄さんはいつも遠坂先輩に迷惑かけているくらいですし……。
 そんな風に、私なんかにも優しくしてくれるから……、私、嬉しくて、でも悲しいです。

 たとえば挨拶を交わす時。
 声をかけられて、少し話して。そんなことが、私には嬉しいんです。
 でも、話が終わって立ち去る時、すっと離れていく遠坂先輩の姿が、私にはなんだかとても悲しいんです。
 たとえば遠坂先輩が美綴先輩と弓道場で話している時。
 楽しそうな表情は、普段見せているあの大人びた表情とは全然違う、年相応の顔で、ちゃんと私たちと同年代なんだなって思えるんです。
 でも、二人が仲良さそうに話しているのを離れたところで見ていると、絶対に近づけない距離を感じます。

 馬鹿なことを考えてるって、思われるでしょうね。
 あなたは、そんなこときっと気にも留めない人ですから。
 ネガティブな思考をするより、きっと現実的な方法を持って動き出してしまうから。
 本当は、私もそうあれたら…って、思うのに。
 ダメですね、私。いざとなると怖くて怖くて、その場から動き出せない。


 はは、私……おかしいですよね。
 どんなに思ったって、祈ったって、願ったって。
 あなたには私の声は届かない。
 誰も私を助けてはくれない。
 別に、誰かに助けて欲しいから……あなたを見ているわけではないけれど。
 誰も私を見つけてはくれない。
 別に、誰かに見つけて欲しいから……あなたを見ているわけではないけれど。

 でも。
 私は弱いから。
 弱くて弱くて、立っているのもやっとだから。
 支えが欲しくて……。

 あなたは遠くで光る一番星。
 地上でふらふらになりながら立っている私には、手を伸ばしても届かない。
 羨ましくて羨ましくて、少し誇らしい。
 だって、あそこまでいける人がいるんだから。
 だって、あれほどまでに輝ける人がいるんだから。
 決して、私はそんな風には慣れないけれど、心の支えに、励ましになる。

 だから私は今でも手放さない。
 私の一番の宝物。
 他の誰も知らない宝物。
 遠い一番星に触れることはできない代わりに、これに触れることができる。
 あなたが私にくれた、あなたのリボン。
 毎日髪に結んでいます。
 あなたと一緒にいるみたいだから。
 あなたが守ってくれているみたいだから。

 あなた本人には届かないけれど。
 せめて、想い出とこのリボンとは一緒にいさせてください。


 あなたが好きです。

 だからせめて、心の中でだけ。
 姉さんって、呼ばせてください。


END
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